食道のおもな病気|西新なかむら内科 胃腸・IBDクリニック|早良区西新の内科・胃腸内科

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食道のおもな病気

食道のおもな病気|西新なかむら内科 胃腸・IBDクリニック|早良区西新の内科・胃腸内科

食道がん

食道は、のど(咽頭)と胃をつなぐ管状の臓器で、口から食べた食物を胃に送る働きがあります。食道がんは食道の表面の細胞(上皮細胞)ががん細胞に変化したもので、がん細胞は増え続けて塊(腫瘍、しゅよう)をつくります。大きくなった食道がんは食道の壁を通る血管やリンパ管を侵し、肺や肝臓などの食道以外の臓器やリンパ節に飛ぶように広がったり(転移)、食道の隣にある気管や大動脈を直接侵したりします。食道がんは、がんの元になった細胞によって扁平上皮がんと腺がんに分けられ、日本では90%以上が扁平上皮がん、5%以下が腺がんです。

食道がんの原因

食道は元々扁平上皮で覆われていて、お酒やタバコががん化の原因となります。お酒もたばこも嗜まれる方はがん化の危険が高まりますし、お酒を飲んですぐに顔が真っ赤になる方は特に食道がんになりやすいことが分かっています。お酒やタバコは食道扁平上皮の遺伝子を傷つけ、その傷は蓄積していきます。例えば高齢になってからお酒やタバコを止めたからと言ってそれまでに蓄積した傷を無くすことはできませんが、それ以上に傷がつくのを止めることはできます。食道は胃につながっており、胃酸が食道に逆流することがあります。胃酸は食道扁平上皮に炎症を起こして円柱上皮(バレット粘膜)に変化させ、慢性の炎症は円柱上皮をがん化させます。このようにできたのが食道腺がんです。ピロリ菌感染率の低下によって以前よりも胃酸分泌が多くなったり、肥満の増加による腹圧の増加で胃酸の逆流が起こりやすくなったりしたことで、日本における食道腺がんの割合が増えています。

食道がんの症状と検査

食道がんは、初期にはほとんど自覚症状がありません。早期発見されるのは、胃カメラで偶然に発見される例がほとんどです。胃がん検診や会社の健康診断の制度を利用して胃カメラを受けていただくことで、食道がんの早期発見・治療にもつながるのです。がんが進行すると、飲食時に胸がちくちくした感じ、しみる感じ、食物がつかえる感じが出るようになったり、体重が減ってきたり、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が出るようになったりします。肺や心臓、のどなどの病気でも同じような症状が出ることがありますので、医師と相談の上、順を追って検査することが大切です。食道がんと診断された後に、CTなどで、肺や肝臓、リンパ節、気管、大動脈への広がりなどを評価して進行度(ステージ)を診断します。

食道がんの治療

がんが粘膜内にとどまりリンパ節転移を認めないものは、胃カメラを用いた局所切除(内視鏡的粘膜剥離術、ESDなど)治りきること(治癒)が期待できることが多いです。一方で、がんが粘膜にとどまらない場合には、患者さまの身体の状態を考慮した上で、内視鏡治療、手術、抗がん剤治療、放射線治療などが単独または組み合わされて選択されます(集学的治療)。

食道がんの予後

治りきること(治癒)の指標である5年相対生存率は、がんが食道にとどまっていた方(限局)で80.4%に対して、遠隔転移の無い方(所属リンパ節転移または隣接臓器浸潤)で33.7%、遠隔転移のある方(肺や肝臓の転移など)では10.0%となっています(2009-2011年診断例)。早期に発見することができれば高い確率で治りきること(治癒)が期待できるのに対して、リンパ節、肺や肝臓に転移するなど進行した状態で発見されれば治りきること(治癒)の可能性はかなり低いことが分かります。

食道がんを予防するためには

  • お酒とタバコをやめること

お酒とタバコは明確な食道がんのリスクです。もちろんお酒を飲む量やタバコを吸う本数が多ければそれだけリスクが高まります。また、お酒を飲んで顔がすぐに顔が赤くなる方は特にリスクが大きいことも分かっています。若い頃はあまり飲めなかったけど、仕事や付き合いで訓練されて今では毎日晩酌している、というのが最もリスクの高い方です。すぐにでも禁酒しましょう。お酒の席ではタバコも付き物ですが、お酒とタバコの組み合わせは食道がんのリスクをさらに高めてしまいます。せめてどちらか止めませんか。お酒もそうですが、タバコは依存性のある嗜好品です。タバコを自力で止めることは簡単ではありません。禁煙外来など医療の力を借りて禁煙することも選択肢です。


  • 食道がんを早期に発見すること

お酒とタバコを止めれば食道がんにならないわけではありません。これまでのお酒やタバコが食道の細胞の遺伝子を傷つけた分は消えないのです。さらに言えば、お酒やタバコを摂取していなければ絶対に食道がんにならないわけでもありません。定期的に胃カメラを受けていただき、胃がんを早期に発見することが大事です。胃がん検診や会社の健康診断の制度を利用して胃カメラを受けていただくことで、食道がんの早期発見・治療にもつながるのです。早期発見できれば、適切な治療を受けることで食道がんにより命を落とすリスクを最小化できます。また、食道がんは時間が経ってから他の場所に発生することもある(異時性多発)ので、治療後も定期的な検査が必要となります。

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、胃酸や胃の内容物(消化中の食物、胃内に逆流した胆汁など)が、食道に逆流して、食道の粘膜が傷つき、胸やけや胸の痛みなどさまざまな症状が生じる病気です。日本人の約10%がこの病気であると推定されており、ありふれた病気です。

逆流性食道炎の原因

  • 胃酸が良く出ること

ピロリ菌は胃に炎症を起こし胃酸の分泌を低下させます。日本では衛生環境の改善や除菌治療の普及によって、ピロリ菌の感染率は大幅に低下しています。ピロリ菌の感染率の低下に伴い、昔の日本人と比べて胃酸が良く出ていることが報告されています。

  • 食道と胃のつなぎ目が緩むこと

食道と胃のつなぎ目はギュッと締まって逆流を防いでいるのですが、脂肪の多い食事を摂るとコレシストキニンという物質が分泌されて食道と胃のつなぎ目を緩めます。また、血圧を下げる薬の一部(カルシウム拮抗薬)はこのつなぎ目を緩めます。その他、胃の一部が横隔膜を超えて食道側に飛び出してしまった病態である食道裂孔ヘルニアでは、胃と食道のつなぎ目を緩めて胃酸が逆流しやすくなるだけでなく、食道に逆流した胃酸が胃に戻ることも妨げてしまいます。


  • 腹圧が上がること

加齢による骨粗しょう症で背骨が曲がることや肥満によって腹圧が上昇します。

 逆流性食道炎の症状

代表的な症状としては、胸焼けや酸っぱい液がのどまで上がってくる(呑酸、どんさん)がありますが、無症状の方もいれば狭心症と区別のつかないような胸の痛み、慢性の咳、不眠(眠れないこと、夜に目が覚めること)を表すこともあります。

逆流性食道炎の検査・診断

問診票を利用するなどして患者さまの自覚症状を詳細に把握し、逆流性食道炎を疑えば胃カメラを受けていただきます。胃カメラでは、食道の炎症の程度や範囲を確認したり、他の病気がないか確認したりします。

逆流性食道炎の治療方法

  • 生活の改善

通常、食事は胃の中に4時間程度たまっています。この状態で体を横にしたり、前かがみやしゃがみ込みなど腹圧が上がる姿勢をとったりすると、胃酸や胃の内容物が食道に逆流しやすくなってしまいます。食事は腹八分目にして、食後は座って過ごす時間をつくるようにしましょう。言うは易し、行うは難し。よくあるのは、お仕事で帰宅が夜遅くになり、夕食後すぐに寝てしまうという例です。特に夜間や早朝に胸やけなど逆流性食道炎の症状がある場合には、夕食の時間を早めたり、夕食の量を減らしたりすることで症状を和らげられます。また、脂肪の多い食事は胃酸を逆流しやすくしますので控えめにしましょう。


  • 薬物療法

胃酸の食道への逆流が主な原因ですので、胃酸の分泌を抑える薬で治療します。強力に胃酸分泌を抑える薬、世界中で多く使用されていて安全性情報が豊富な薬、後発品(ジェネリック医薬品)があって安く購入できる薬などの選択肢がありますし、他に常用薬がある場合には飲み合わせも考慮する必要があります。また、直接的な治療ではありませんが、血圧を下げる薬であるカルシウム拮抗薬には食道と胃のつなぎ目を緩くしてしまう副作用がありますので、他の血圧の薬に変更できるのであればそれも選択肢となります。

  • 外科的治療

薬物治療の効果が乏しい場合や、食道炎が重症化して、食道が狭くなったり、出血を繰り返したりするような方には、手術により逆流を防止する治療が行われることがあります。ただし侵襲の強い治療法であり、十分な内科的治療が行われた後に検討されます。

バレット食道

元々、食道は扁平上皮で覆われていますが、胃酸や胆汁が食道に逆流することで食道の扁平上皮が円柱上皮に変化したものをバレット粘膜といい、バレット粘膜がある食道をバレット食道といいます。バレット粘膜の範囲が全周性で3cm以上の食道をLSBElong segment Barretts esophagus)、LSBEの条件を満たさないものをSSBEshort segment Barretts esophagus)と分類しています。

バレット食道の頻度と発癌のリスク

日本人では、SSBE2.0%から59%と報告によって差がありますが、食道がん(腺がん)のリスクと関連が明らかなLSBE1.0%未満と少ないです。LSBEからの発がん頻度は年率1.2%と推定されています。LSBEと診断されたら毎年の胃カメラを受けるようにしましょう。

食道裂孔ヘルニア

胸とお腹を隔てている横隔膜には、食道がぎりぎり通る隙間があります。これを「食道裂孔(れっこう)」といいます。「食道裂孔ヘルニア」とは、胃がこの裂孔から胸へ飛び出してしまった状態です。胃の飛び出し方で滑脱型、傍食道型、混合型の3型に分類されますが、滑脱型が大半を占めます。食道裂孔ヘルニアでは胃液が逆流しやすくなり、食道炎を起こします。

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